テキストサイズ

澪―みお―

第2章 井藤 美智子

矢先だった。娘を授かったのは。
奇しくも、冬に産まれた娘は亡くなった息子に瓜二つだった。
私は、心なしか安堵していた。
これでやっとお義父さんからの苦痛から解放される。
娘の誕生よりも、自分の保身を思っていた。

しかし、甘かったのだ。
娘の誕生は確かに喜ばれた。
私に対する態度は、酷くなるばかりだった。
お義父さんの中で、ついに私は用なしになってしまったのだ。
娘が産まれたことにより、私は彼の中での役目を終えたというわけだ。
そんな馬鹿なことがあっていいのだろうか。
主人の励ましも、フォローも受けられないまま、私は離婚を決意した。
親権もなにもかもいらなかった。
娘が産まれた瞬間も喜びは薄かったし、なにより私が必要とされていない怒り、悲しみを娘に向けていた。
私はひとりで生きていく。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ