テキストサイズ

Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第4章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 

 紗英子もまた裸のまま上掛けの下にすべり込んだ。パジャマや下着は直輝に脱がされたまま、まだ下に散らばっている。
 それを見ると、余計に空しい想いが胸にひろがってゆくのは、どうしようもなかった。自分たちを繋ぐのは身体の繋がりだけ、直輝は自分に対して、大切なものを見せても良いと思える人間だと思うほどの価値を見出してはくれなかった。それは信頼という言葉で置き換えても良いかもしれない。
 夫は十三年間、連れ添った妻よりも有喜菜をより信頼していたのか。
 身体だけの繋がりなんて、何の意味もない。直輝と有喜菜は確かにただの友達にすぎなかったのかもしれないけれど、彼は有喜菜に、恋人であり妻でもあった紗英子には見せられないほど大切なものを見せていた。しかも、今から二十三年も前に。
 紗英子は彼との間に二十三年分もの月日を積み重ねてきたのに、実は、その重みは彼にとっては何の価値もなかったということだ。
 百歩譲って、それが言い過ぎだとしても、結局、紗英子と直輝の二十三年間は、有喜菜と直輝のたった一年間にも及ばなかった―そういうことだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ