テキストサイズ

Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第4章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 

 見た目は裁縫箱くらいの大きさで、木製の温もりの感じられる仕様だ。蓋にはアイボリーで〝WOODY TIME〟とプリントされている。あまり飾り気はないが、宝石箱か、小物入れといった感じだ。
 直輝は箱の蓋を開いたままの状態で、紗英子に指し示した。
「見てごらん」
「凄いわ」
 紗英子は思わず歓声を上げた。
 上蓋が開いた箱の中は紅のビロード張りで、中には数え切れないほどの腕時計が並んでいた。
「どうだ、なかなかだろ」
 得意げに言う様子は、中学生どころか小学生の男の子が宝物を披露するようである。
「有喜菜に見せたときは、まだ、この十分の一も集まってなかったと思う」
 せっかくの夫婦の語らいに、またしても有喜菜が登場したことに―しかも直輝の方から先に出してきたことには鼻白んだものの、こここで指摘すれば、元の木阿弥になりかねない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ