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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦

 結局、不幸なのは生まれてきた子どもではないか。人為的操作を施され、この世に誕生させられた小さな生命を、直輝は父親として認め慈しんでやることはできない。母親である紗英子は溺愛するではあろうが、その子を得ようとしたそもそもの出発点が間違っている。
 自分たち夫婦がこの先、どうなってゆくのが実のところ、直輝自身にも判らなかった。紗英子が代理母出産を諦めてくれさえすれば、まだまだやり直しはできたはずなのに、幸か不幸か一度目の治療で代理母が妊娠したことが、自分たち夫婦を二度と寄り添えぬ関係にしてしまった。

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