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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦

 刹那、満奈美がかすかに片目を瞑って見せた。直輝はまるでおぞましいものでも見たような気持ちで、慌てて視線を逸らす。
 全っく、何なんだ、あの女。
 腹立たしい気持ちになり、直輝はそのまま最上階の社員食堂にランチを取るために行った。むろん、満奈美のことなど、もう頭にはない。考えているのは、今夜、六年ぶりに再会する有喜菜のことだけだ。
 だから、満奈美が去っていく自分の方を燃えるような憎悪を宿した眼で見つめていることにも気づくはずもなかった。

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