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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦

「おい、そんなに一気のみして大丈夫なのか?」
 ふふっと、有喜菜はまた無邪気にも見える笑みを浮かべた。
「直輝、私、今、妊娠しているの。だから、あなたの言うとおり、こんなにお酒を飲んじゃ駄目なのよ」
 刹那、直輝は息が止まるかと思った。
「妊娠? 君、再婚―」
「するはずがないでしょ。男も結婚ももう懲り懲り。最初の男は最低だったわ。二度とあんな想いはしたくない」
「じゃあ、何で」
 言いかけ、自分でも良い歳をした男が口にする質問ではないと思った。
 有喜菜も三十六歳の女なのだ。他人には言えない交友関係もあるだろうし、当然、その中には深い仲の男もいるだろう。むしろ、これだけの良い女なのだから、男が放っておくはずがない。
 しかし、何故か直輝は面白くはなかった。有喜菜が顔も見たことのない男に抱かれているシーンを想像しただけで、怒りで眼裏が紅く染まりそうだ。

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