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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第9章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦

「やだ、直輝って、こういう趣味があったの?」
 身を起こした有喜菜が涙ぐんで睨むのに、直輝は声を立てて笑う。
「まさか。でも、一度、やってみたかったんだよ。まずいな、これは病みつきになりそうだ」
 などと平然とうそぶいている。
「くすぐられて我慢できないなんて、まるで子どもみたいじゃないか」
「酷いわ」
 本当に涙が出てきて、プイとそっぽを向くと、直輝が機嫌を取るように有喜菜を後ろからそっと抱きしめる。
「でも、身体は十分すぎるくらい大人だよ」
「直輝の意地悪」
 有喜菜は拗ねた口調で言い、また横を向く。
 そこでハッと我に返った。
「ちょっと待って」
 服を脱がされたものの、首にはネックレスを掛けたままだったのを思い出したのだ。今日は少しドレッシーなワンピースだったので、ネックレスもジルコニアがシルバーチェーンにたくさんついた煌びやかなタイプのものを選んだ。チェーンに小さな滴型のジルコニアが無数に付いているので、見た目はきらきらと光って、まるで露の滴を身に纏っているようである。

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