恋ばか
第9章 ~婚約~
…沈黙が続くまま亮の部屋に到着したが、テーブルを囲んで座っても、しばらく沈黙が続いた。
気まずい空気の中、一番最初に口を開いたのは春架だった。
「…ねぇ…兄ちゃん…」
「な、なに?」
急に話し掛けられて多少驚きつつも、返事をする。
「…兄ちゃんは…その……小原先輩の事…好きなの…?」
「え…?」
驚いてしばらく言葉を失う。
「好き……なんだよ…ね? じゃなきゃ…キス…なんてしない…し…」
「……お前…さっきの見てたのか?」
春架はうつむいたまま、黙って頷いた。
…春架に話すつもりはなかったが、バレてしまったものは仕方がない。
俺は正直に話す事にした。
「……春架の言うとおり、俺は…亮が好きだよ…」
「…………なんで?」
問い返されて、一瞬固まる。
「なんで…その人の事好きになったの?」
「なんでって言われても…その…」
予想外の問いに言葉を濁す。
「…………」
春架は、俺の返事を黙って待っていた。
俺は頭をフル回転させて答えを探した。
そして、言葉を選びながら慎重に答える。