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恋ばか

第17章 ~新しい恋人~

「それに、俺は頼まれただけだしね。」

頼まれただけ…?

「…どういう事だよ?」

「うーん…そうだなぁ… せっかくだし、この際、全部話してあげるよ。」

空はそう言って一瞬息をつくと、再び口を開いた。

「留架が目を覚ました次の日、朝一で桜木成海…留架の父上がお見舞いに来られた。
その時、微量の麻薬を混ぜたお茶を留架に飲ませた。

薬が効いてきたのを見計らって、留架に嘘を吹き込んだ。

『境達がお前を騙そうとしている。』ってね。

留架が信じるように、機械で合成したテープレコーダーまで使った。

催眠状態だった留架はすぐに信じたよ。
それで、最後にこう言った。

『お前が今まで付き合ってたのは小原亮ではなく、小泉空だ。』と…

そうやって、留架の記憶を作り変えた。」

しばらく沈黙が続く。

沈黙を破ったのは、意外にもカズだった。

「留架が言ってた結婚式って?」

誰もが気になっていた事に、視線が自然と空に向けられる。

「あぁ…記憶を作り変える時、俺と留架は婚約してるって吹き込んだんだよね。 で、桜木財閥と小泉財閥が少しでも早く合併したいって事で、形だけの結婚式をやるわけ。
もちろん、正式に結婚するのは18になってからだけど。」

空はそう言って、腕時計をチラッと確認した。

「もう行かないと…じゃあ、また明日。」

「ちょっと待て。 最後にひとつ…いいか?」

俺の言葉に空は小さくため息をつくと頷いた。

「お前が留架の父さんからの頼みを聞いたのは、その…留架の事が好きだからなのか?」

「…………」

空は少し考える素振りを見せるとゆっくりと口を開いた。

「違うよ。 留架を好きだからじゃない。」

「っ!! そう…なんだ…」

強く拳を握る。

(留架はこいつの事、好きなのに…)

空は俺の反応に満足そうに笑うと、静かに部屋を出て行った。

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