
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「今は一人で外を出歩かない方がいいよ。」
「………」
一臣さんは、俺のことを心配してくれている。
「それに、春架君に手伝わせたのを境が知ったら、俺が殺させるからね。」
一臣さんの言葉に、俺は吹き出した。
「そうですね。」
「うん。 連絡がきたら、教えてくれる?」
「もちろんです。」そう答え、一臣さんと別れた。
「…うーん…」
それにしても、境兄ちゃんはどこに行ったんだろう?
「境兄ちゃんが行きそうな場所…」
考え込みながら、車に乗り込む。
「あの、春架様。」
「ん?」
運転手が、手紙を渡してきた。
「先ほど、男子生徒が春架様に…と。」
「俺に?」
不思議の思いながらも、手紙を受け取る。
「…っ!!」
中の紙には、文章がたった一文。
『君の大切なものがなくなっていく。』
真っ先に思いついたのは、境兄ちゃんのことだった。
「春架様?」
「…なんでもない。」
思い過ごしであることを願いながら、俺は家路についた。
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「…え?」
嘘でしょ…?
「真依ちゃんがいなくなった?」
「………」
もう一度聞くと、ユイは黙って頷いた。
『君の大切なものがなくなっていく。』
昨日手紙に書いてあったことが…
「…っ…」
俺のせいだ。
俺が、関係のない人まで巻き込んでいる。
