
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「無事でよかった…」
「ぁ…」
空さんの手…震えてる?
「お前になにかあったら、俺は…」
「…どうして…」
「ん?」
抱きしめられるのが、つらい。
「どうして俺なんかの心配するんですか?」
「…っ…それは…」
こんなに優しく抱きしめられたら、また…
「………だから。」
「…ぇ…?」
自分の耳を疑った。
「好きだからだよ。」
「…ぅ…そっ…」
空さんが…俺を…?
「ごめんな。」
なんで…なんで謝るの?
「最初に約束したのに、破っちまって。」
『絶対にお互いを好きにならないこと。』
「それに…」
「…?」
まだなにか…
「お前には、他に好きな奴がいるのにな…」
「違いますっ!!」
空さんの言葉を即座に否定する。
「俺も、空さんが好きです。 他に好きな人なんていませんっ!!」
「え?」
正直な気持ちを、やっと言えた。
「前に、空さんと木原先輩がラブホに入っていくのを見て…」
「ラブホ?」
一度言い出したら、止まらなくなった。
「その時、空さんのことが好きだって自覚したんです。」
空さんはなにも言わず、黙って聞いてくれた。
「でも、最初に約束したことを思い出して…破ったから、もうそばにはいられないと思って…」
いっぱいいっぱいになって、目がうるんできた。
「一回は離れたけど、やっぱり空さんが好きで…なのに俺は、空さんに迷惑かけっぱなしで…」
「春架。」
我慢できなくて泣き出した俺を見て、空さんは笑った。
