
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「ふーん…」
「不安ですか?」
まだ納得していない様子の亮さんにそう尋ねる。
「え?」
亮さんは驚いたように俺を見ると、素直に頷いた。
「まあね。 そりゃ、不安は少しあるよ。」
「そうですか。」
好きだからこそ、不安になるのだろう。
「…亮さんが心配する必要はないと思いますけど。」
「え、なんで?」
だって、兄ちゃんは電話で…
「………教えません。」
「ええ!?」
俺が伝えることじゃないか。
「兄ちゃんに直接聞いて下さい。」
そう言うと、亮さんは微笑んだ。
「そうだね。 そうするよ。」
穏やかな空気が流れる。
「…そういやさ…」
お見舞いの果物を食べながら、境兄ちゃんが口を開いた。
「なんでお前目が覚めたの?」
「俺?」
空さんが自分を指さす。
「意識不明の重態だっただろ?」
「あぁ…」
言われてみればそうだ。
「聞こえたんだ。」
「聞こえた?」
なんで空さんは目を覚ましたんだろう?
「あぁ。 助けを求める声が聞こえた。」
空さんと目が合う。
「お前の…春架の声だった。」
「俺ですか…?」
空さんは優しく…本当に優しく微笑んだ。
「助けないと…って思ったら、目が覚めた。」
「空さん…」
名前を呼ぶと、頭を撫でられた。
「お前が俺を目覚めさせたんだよ。」
「なんでそんなことできたんでしょう?」
俺の問いに、空さんはにんまりと笑った。
