恋ばか
第31章 ~おまけ~
「そういえば、『最初から。』って亮さん言ってましたよね?」
「あぁ…そんなことも言ったね。」
あの日のことを思い出して、亮さんは頷いた。
「あれって、どういうことですか?」
「ん~…」
兄ちゃんとの電話が切れた後で、そう尋ねた。
「春架君が木原に脅されてたのは知ってたから、ずっと木原を監視してたんだ。」
「え?」
脅されてるのを知ってた?
「そしたら、境達を体育倉庫に運んで行くのが見えて…」
そんなところから…
「そのあとすぐに春架君が入って行くのが見えたから、空達を呼びに行ったんだ。」
亮さんは俺のことを見ていてくれたのか。
「ギリギリ間に合ってよかったよ。」
「…ありがとう…ございます。」
俺は、いろんな人に守られてたんだ。
「なぁ、境。」
改めて実感していると、空さんが境兄ちゃんに声をかけた。
「ん?」
「黒澤さんはいいのか?」
一臣さんの名前が出た途端、境兄ちゃんの顔が曇った。
「あの人、ずっと受付前の椅子に座ってるぞ?」
「え?」
境兄ちゃんが驚いて顔を上げた。
「そうそう。 お前が入院してから毎日。 朝早くから遅くまで。」
そう言えば、俺がここに来た時もいたな。
「毎日?」
「うん、毎日。 仕事休んで。」
なにか思いつめてたみたいだから、声をかけられなかったけど。
「面会終了時間です。」
看護師さんの言葉を聞き、帰り支度を始める。
「先生達も困ってるから、早く仲直りしろよ。」
「じゃあな。」
空さんに手を引かれ、病室を後にする。
「境兄ちゃん、またね。」
「失礼します。」
病室を出る直前にそう声をかけると、ユイも後に続いた。