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どらくえ3

第3章 ナジミの塔

2階には特に変わったところはなかった。

魔物達の気配はするものの姿は見せなかった。

3階への階段を上がる。

先頭はイース、次はアベル、リサと続いて、最後尾にムタイの順で進んでいく。

3階は塔の側壁に窓が多く設けられており、明るく、アリアハン海を見ることができた。

アベル達は各部屋に盗賊の鍵に関して手掛かりになるようなものがないか、探索しながら進んだ。

しかし何も得られないまま、おそらく3階最後となる部屋に足を踏み入れたとき


「ギギギ、ギギィィ!」

とうめくような鳴き声が周囲から聞こえた。

「気を付けろ!」

先頭のイースが叫ぶ。

わさっわさっ…

大きな布をひるがえすような音がする。

すると、突然、アベルの目の前に人間の顔が現れた。

「うああ!」

アベルは驚いて後ろへ下がる。

そこにいたのは大きな蝶だが、体に人間の顔のような模様があった。

「あれは…人面蝶じゃ!」
ムタイが叫ぶ。


「気持ち悪っ!」

リサも叫ぶ。


人面蝶。

一説には、戦場で死んで浮かばれない兵士の魂の成れの果てという。

人面蝶はひらひらと嘲るように飛び回る。

3匹はいるようだった。

「脅かしやがって!」

アベルが一番に銅の剣で斬りかかる。

アベルが剣を振りかぶったとき、人面蝶は待ってましたとばかりに

『マヌーサ』

と魔法を唱えた。

びゅん!

アベルの剣が空を斬る。

―ミス!?確かに斬ったと思ったのに!?

「アベル、幻惑の魔法だ!」

―幻惑?

俺は人面蝶の術中にいるのか?

確かに、無表情な人間の顔が無数に回っている。

「くそう!」

アベルは滅茶苦茶に剣を振り回すが一向に当たらない。









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