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どらくえ3

第3章 ナジミの塔

「アベル、落ち着け!」

イースが叫んでいる。

しかし、アベルにはイースの姿は見えていない。

イース達はアベルが剣をやたらと振り回しているので、助けたくても近寄れない。

―くそっ!くそっ!

アベルは焦っていた。


そして、回りを飛び交う無表情な顔がニタリと笑った気がした。

ヒヤリと背筋が寒くなる。

ガッ!ドガッ!ゴッ!

「ぐあっっ!」

アベルが叫び声をあげて倒れる。

人面蝶がアベルに体当たりをしたのだ。

集中攻撃だった。

「大丈夫か!?」

イースは叫んでアベルに駆けよって守る。

続いてムタイも術を唱えながらアベルに駆けよる。

アベルは衝撃で気を失っているようだった。

『ホイミ』!

回復の術をムタイが唱え、アベルの体が青白く輝く。

「ギギィィ!」

人面蝶がそうはさせじとイース達に同時に襲いかかってきた。

「やってみろ!」

イースが身構える。

そこへ狙いすましたリサの魔法。

『メラ』!

火球が人面蝶の1匹に飛んでいく。

直撃!

人面蝶が燃え上がる。

と同時にイースが人面蝶をギリギリまで誘い込み、突きを放つ。

サクッ!

人面蝶の腹の無表情な顔が歪んだように見えた。

額の部分にイースの刃が刺さっている。

ビクビクと人面蝶は体を震わせて息絶えた。

残る1匹は、無防備のムタイを狙っていた。

しゃがんでいるムタイの真上から襲いかかる。

その下にはアベルが横たわっていた。

人面蝶がムタイの頭に体当たりする寸前、

「完了じゃ!」

とムタイが叫び仰向けに倒れた。

そこから現れたアベルは、体を跳ね起こすと同時に人面蝶を両足で蹴り上げた。

思いもよらず上空へ蹴りとばされた人面蝶は、そのまま上空から落下してくる。

「くらえっ!」

アベルは下段の構えから、落下してきた人面蝶の胴体を凪ぎ払った。

ドガッ!!

命中!

人面蝶は壁まで飛ばされ床に落ちると動かなくなった。

人面蝶の腹の顔は、息耐える前、一瞬、満足そうな顔を見せたことにアベル達は気付かなかった…。

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