
どらくえ3
第3章 ナジミの塔
アベルは受け取った鍵を見た。
銅の色合いで単純な形をしており、装飾もない。
他の仲間も鍵を見に集まって来た。
「アリアハンで捕まった盗賊バコタが、自分が盗賊の鍵を作った、なんて豪語していたわよ?」
鍵を見ながらリサが老人にずけずけと言う。
「ふふ。バコタか。奴はわしの技術を盗んでやると言って、しばらくここに居座っておったんじゃ」
「へー」
「しかし鍵作りはそれほど簡単ではない。ましてや、どんな扉でも通用するような鍵はな。」
アベル達は頷く。
「バコタはわしが作った失敗作を持ち出して、姿を消した。あれは便所の鍵くらいしか開けられん代物じゃった。バコタのことだから、大方、おなごの便所でも開けて捕まったのじゃろうて。」
老人はおかしそうに笑って言い訳のように言う。
「いや、バコタは臆病者で小物でな。一緒に過ごすと憎めん奴なのじゃ」
そうか、捕まりおったか等と老人は一人で愉快そうに笑っている。
「どうして俺達に、そんな大事な鍵を簡単に譲ってたんですか?」
とイースが老人に尋ねる。
「わしは鍵職人、鍵穴に合う鍵は見定めることが出来る。人も同じじゃ。必要とされる者は見定めることが出来る。お前達にはこの盗賊の鍵は相応しい。役立ててくれ。」
「ありがとうございます。そう言って頂けるなら、有り難く頂戴します。」
とイースが礼を言った。
「次はレーベの村に行けばよいだろう。幸運を祈っておる。」
こうして盗賊の鍵を手に入れた俺達は、老人に見送られてナジミの塔を後にした。
