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BL~中編・長編集~

第18章 バラ園

「バラ…」

「は?」

真さんが訝しげに顔を歪めたのを見て、慌てて言葉を続ける。

「あっ、その…なんでバラなんですか…?」

「…質問の意味がよくわからないんだが…」

そう言って、真さんは小さくため息をついた。

俺は慌てて言葉を付け足す。

「いやっ、その…普通日本庭園に咲いてるのって、ユリとか、アヤメとかじゃないですか…
だから…なんでバラなんだろうなって…」

「……」

真さんは一輪のバラに近づくと、ハサミでそのバラを切った。

「…バラが好きだからだよ。」

「好き…?」

真さんは俺の言葉に頷くと、少し…本当に僅かだけど微笑んだ。

「そうだ。 美しく花を咲かせるのに、まるで誰も寄せ付けまいとするかのように、その美しい茎に棘をつけている。

私は、そんなバラの魅力に取り憑かれたんだ。」

バラと着物は合わないはずなのに…
そう言いながら、バラを口元に寄せる姿はとても綺麗で…

思わず見入ってしまった。

そんな俺の視線を感じたのか、真さんが俺を不思議そうに見てきた。

「なんだ?」

「あっ、いや…綺麗だなと思って…」

思わず本音が口から漏れる。

(やば!! 俺、何言って…)

「ああ…確かにバラは綺麗だな。」

「へ?」

どうやら、真さんは俺がバラの事を綺麗だと言ったと思ったみたいだった。

ひとまず、胸をなで下ろす。

「君も、バラが好きなのか?」

「えっと…はい。」

話題が花になった事で緊張がだんだん解けてきた。

俺はしゃがみ込むと、近くにあったバラの花びらをそっと…優しく撫でた。

「俺も、花が…特にバラが好きなんです。」

そう言って、にっこりと微笑んだ。

真さんは俺が微笑んだ事に驚いたようで、一瞬固まると、口を開いた。

「なぜ…」

「え?」

バラから目を離し、真さんを見上げる。

「なぜ、私の前で笑える?」

「…?」

意味が理解出来ず、首を傾げる。

「普通に笑えますよ?」

「…!! 君は…私が怖くないのか?」

真さんは本当に驚いているようで、目を見開いている。

俺は真さんから目をそらすと、思った事を素直に話した。

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