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BL~中編・長編集~

第24章 ~番外編③~

『最近さ、潤が冷たいっていうか…何もしてこないんだよな…』

『欲求不満なの?』

いつもなら僕の言葉に笑って返してくる豊は、この時は本当に落ち込んでいたみたいで…

『……なんかさ、怖いんだよ。 今潤と一緒にいられるのが奇跡みたいなことだってわかってるのに、どんどん欲張りになっていく自分が。

もしかしたら、潤はそれがうっとおしくなってきたんじゃないか…って…』

豊が僕にこんな相談をしてきたのは、初めてだった。

『最近、キスもしてくれなくなってきたし…今日も潤の家に泊まりに行くんだけどさ…一緒の布団で寝ようともしてくれないんだ。

こんなこと言うのは…潤にも、俺達のことを祝福してくれたお前にも悪いとは思うけど…』

静かな笑みを浮かべた豊。

その笑みは、半年前の豊が浮かべていた笑みと同じで…

『ゆた…』

怖くなった。

『俺…前の状況の方がマシだったと思う。 幸せに浸らせておいて、また捨てられるようなら…』

今にも泣きだしそうな…か細く震える声で、豊はそう言うと、顔を伏せてしまった。

『……豊、僕はね…』

二人の間に何かがあったのかもしれない。

潤は潤なりに何か考えがあって、そういうことをしているんだと思う。

豊が不安に思う気持ちはわかる。

そんな豊に、僕が言ってあげられるのは一つだけ。

『潤が何を思ってそんなことをしてるのかわからない。 もしかしたら、豊のことを傷つけてる自覚がないんじゃないか。って思うよ。 でも…』

僕が唯一、自信を持って言えることは…

『潤は誰よりも豊のことを愛してるよ。 一緒に、向こうに逝こうって言えるくらいね。』

豊が自殺まで追い込まれてしまった原因は潤にないわけではない。

そのことを、僕はまだ完全に許したわけじゃないし、完全に許せる日が来るとも思ってない。

だけど…

『…人の心は移り変わるもんだろ…』

豊を自殺から救ったのは、まぎれもなく潤なんだ。

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