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↑逆転↓御斗戯世界

第2章 始まりはいつも突然

【Side: 璃斗】

それは体を傷つけられた痛みではなく、況してや心臓を一突きするような激痛でもなかった。何が起こったかわからない。

腕を掴まれ、少女と引き離され無理矢理引っ張られる。思ってもみなかった事態に思わず顔を上げた。

そしたらそこには、ナイフを持った男ではなく、先程来た長身の男の顔(といっても口元しか見えない)が、すぐそこにあった。

超展開すぎて脳がついてきていない。ナニコレ、なんかのドッキリだったの?

戸惑いの言葉を発すると同時にその長身の男は私を引っ張り走り出した。線路の方に。

電車が轟音をたてて近づいてくる。今、線路に飛び出したら、間違いなく轢かれる。

「ちょ、まっ…」

静止の言葉をあげるよりも早く、腕を引っ張っていた男が、私の腰に手を回し、ひょい、と持ち上げた。男の腰のあたりで宙ぶらりんになっている謎の状況に、私の脳はプチパニックどころではない。でかパニックだ。もしくは、パニック(大)。

少女を気遣う暇も、殺人鬼の様子を窺う暇もなかった。

「舌噛むんじゃねぇぞ!!」

「え、」

なかなかのイケボ、と思う余裕があったのはほんの一瞬。

そして長身の男は、丁度電車が来るタイミングを見計らって線路に飛び出した。もちろん、悲鳴をあげる暇なんて全くなかった。

電車がスピードを緩めず、真っ正面からまるで獅子のように近づきそして。


気がついたら、冒頭のような状況になっていた。

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