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↑逆転↓御斗戯世界

第2章 始まりはいつも突然

【Side: 璃斗】

震える腕で少女を抱きすくめると、少女も私と同じ気持ちなのか、私の皺ばかりの制服に新たに皺を作るほど握りしめた。

視界には少女の肩しかなかった。男を見ていると、殺されるということを嫌でも自覚してしまうから。さっき上がってきた男も、どうでもいい。

「ころ、す…ころ…」

ずっとうわ言のように繰り返すその言葉は、自分にとって恐怖しか与えない。間違いなく殺される。

こんな時に思い出すのは家族や友達、それと書きかけの小説の事だった。

まだ途中なのに、と何故かそんなどうでもいいようなことばかり出てくる。しまいには、来週のアニメの再放送のことまで考えた。

まだ録画がたくさん残ってたのに、あの忍者は無事火影になれたのか、映画化って本当だったのかな?


男の纏う空気が一瞬で変わった。

(あぁ、殺される…。)

やけに冷静にそう思った。次に来る痛みに耐えるため、目を強く瞑り、そこからひとつ、涙をこぼした。

私はまだ生きて、これからものんきに馬鹿げたことを考えていたかった。

そして来た衝撃。

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