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↑逆転↓御斗戯世界

第3章 私と魔法使いとファーストキス

【Side: 璃斗】

ザッザッとなにかが近づいてくる。


遥か向こうの方から、かすかな音が聞こえた。なんの音かは遠すぎて把握できない。

それは次第に大きく、はっきりとした音を発してくる。だが、姿はまだ見えないそれ。人は姿が見えないほど恐怖心を煽られるって誰かが言っていたけど、確かにそうだ。なんの音かわからないのは不気味だ。

思わず助けを求めるように隣を見た。隣の男はその音に動じた様子もなく、なにかを思案しているようだった。

「ねぇ、ここどこなの?」

「うるせぇ、ちょっと黙ってろ。」

こ、こいつ…!!被害者である私が下手にでてあげてるのに黙ってろなんて…ほんっとうにムカつく。聞きたいことは山ほどあるのに、何一つ答えてくれないデカブツ。

不安で泣きそう、なんて乙女なこと思わない私だけど、さすがにこの状況は落ち着いていられるようなものじゃないと思う。

だってさっきまで普通の駅にいたのに、目を開いたら広野に到着ってどんな魔法よ。ドラ〇エなの?ド〇クエの世界に来ちゃって、勇者になってこの世界を救う旅に出ろって?ふざけてる。ぜひ喜んで!!

「出る場所しくったな、クソ。」

私を抱えている男はそう呟いた。出る場所って…やっぱり、

「アンタ、魔法使い?」

「………」

目を点にしたわけでもなく、呆気にとられているわけでもなさそうだが、男はこちらを見たまままた何か考え始めていた。

聞いたのは私だけど、ああいった質問を否定されたり馬鹿にされないと、逆にこっちが恥ずかしいことに気がついた。今後から気をつけよう。

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