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↑逆転↓御斗戯世界

第3章 私と魔法使いとファーストキス

【Side: 璃斗】

数秒間、衝撃で動けなかった私は、やっとのことで、“抵抗”という術を思いついた。

腕に力を込めて、男の胸板を叩くと、目の前の男は目をあけ、その真紅の瞳をこちらに向けた。

そして、男はあっさりと唇を離して、顔を遠ざけた。遠ざかってようやくその顔を拝めることができた。

輝くような銀髪と真っ赤な目の彼は、その綺麗な目でまっすぐ私を見ている。自分で言うのもあれだけど、何か大切なものを見るような、優しい目をしていた。気がした。

相手がなにも言わないから、こちらも言い出しにくい。というか、怒鳴る余裕もないほど、今度は私が呆気にとられていた。


「き、きす…?」

思わず口から零れてしまっていた単語に、自分で言っておきながら一気に顔が熱くなる。

そうだ、私、この男にキス、されたんだ、よね?しかも…

「初めてだろ?」

「っ!!」

目の前の男はにやり、と口角をあげて、面白そうに笑みを浮かべた。その顔はどこか見覚えがあるような、ないようなものだったけど、そんなことはすぐに頭からぶっ飛んだ。

「そうだ、教えてほしいこと、教えてやるよ。俺の名前はウィザード・ヴィングローリー。お前の考え通り、魔法使いだ。そして、」

私のファーストキスを奪った男─ウィザードと名乗った魔法使いは、懐から取り出したサングラスをかけ、歯を見せていい笑顔をした。

「ここは幻想の霊域、御斗戯世界(ケイオスワールド)だ。よろしく、”王子”?」

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