秘書のお仕事
第4章 秘書のお仕事
もう、間接キスがなんだい
あたしは躊躇うことなく、その少し三日月に欠けたハンバーガーにかぶりついた
『うぐっ…ぅおいしぃ…』
あたしは目をウルウルさせながら、ハンバーガーを食べた
涼は、まるで野良犬でも扱うようにあたしの頭を撫でる
「よしよし、食え食え」
『うん、うん、食べる~』
あっという間に、涼の手元にあったハンバーガーはなくなった
『あ~おいしかった、涼ありがとうっ』
「どういたしまして、何だ千晴は食べ損ねたのか?」
『まぁ…仕事に夢中になってたらついつい』
あたしは人差し指で口の端を拭った
「じゃあ俺と一緒だな、俺もよく昼飯抜かしちまうんだ。
だから常に携帯食持ってる」
『へー、でもそれじゃお腹空くんじゃ…』
え…
もしやもしや…
『さっきのハンバーガー…涼のお昼ご飯だった…?』
「気にすんなって。昼抜きは馴れてるし」
あたし、馬鹿ーーー!!!
あたしは涼の腕を掴んで、揺すりながら謝った
『ほ、ほんとにごめっ、あたし食べちゃった…涼の大事なお昼ご飯…!!』
「いいからー、俺は平気だって」
何度も何度も謝るが
何度も何度も笑ってくれる
ほんとに、いいやつ
あたしはポトンと手を落とし、ため息をついた
『…今度、おごらせて』
「え、いいの?」
『うん』
すると涼は、さらにニコ~ッと笑った
「んじゃ、明日の晩飯でもおごってよ」
『うん、任せんしゃい!!』
あたしが意気込んでみせると、
「じゃあ仕事終わったら、1階のロビー集合な」
と言い残し、涼は行ってしまった
もう、仕事に戻るのか…
熱心で
頑張り屋さんなんだな…
『あたしも』
またエレベーターに乗り込み、社長室へ向かった