向かいのお兄さん
第2章 向かいのお兄さん
―――――――――――
「直也ぁ、ただいまー留守番ご苦労様…って…何食ってんだお前?」
「むぐ?
京饅頭」
同僚たちや佐藤さん、みんなが出張から帰ってきたようだ
外にはトラックが止めてあり、続々と中へ入ってくる
「京饅頭?美味そうじゃん、くれよ」
「うん、皆さんで食べてくださいだってさ」
鬼畜こと直也という男の周りに、一気に人が集まった
「誰にもらったんだ?」
「お向かいのお嬢さん」
直也はご機嫌に饅頭を頬張る
「お向かいって…松浦さん?
ダメじゃん、何勝手に食ってんだよ?」
「え、だめ?」
「当たり前だろ、ちゃんと佐藤さんに食っていいか聞けよ」
同僚に注意され、直也は若干落ち込んだ
しかし、それを聞いていた佐藤のおっちゃんは
「みんなで食っていいぞ~」と許可を出してくれた
我先にと、腹ぺこな男たちは京饅頭を口にした
うまっ
うめー
と辺りから聞こえる
「――ってことは直也さぁ、あの女の子と喋ったんだな」
「まあな…名前知らないけど」
「美咲ちゃんだよ、美咲ちゃん。覚えとけって」
すると直也の口元が、ニヤッと笑った
「へー…美咲ちゃん♪」