向かいのお兄さん
第10章 利益、これ
「は…ぁ…美咲の顔…俺のでめちゃくちゃ…」
『…まずぃよ…』
「そのうち美味しいって思うようになるから」
直也は微笑すると、しゃがんであたしと目線を合わせた
「エロい顔…」
チュプッと舌を入れたキスをし
あたしはまた意識がぼんやりしてくる
「…確かに、まずいな」
『…うん』
直也は苦笑し、ティッシュであたしの顔を拭いてくれた
「これが、美咲の言う利益?」
『…うん』
「なるほどな…とりあえず、もうこれで俺は得したことになるんだ
声は消さないからな」
『え、消してよ』
「やだ」
『何で?』
「美咲をいじめるのが、俺の本当の"利益"だから」
確かに、あたしも直也の顔見て楽しんだけれども…
『それとこれとは話が別。早く消して』
「消さない」
『ちょっとー…』
結局その日も、あたしは"声"を消すことに失敗した