向かいのお兄さん
第12章 洗わなきゃ
『返して』
「せっかく綺麗にしたんだし、こんな服着せらんない」
あたしが手を伸ばすと、直也はさらに遠のけた
『服貸して』
「だから、キスしてくれたら貸す」
『…』
何で
毎回
お前の
言うこと
聞かなきゃ
ならんのだ?
『…横向いて』
「はい」
直也はご機嫌そうに、プイッと横を向いた
あたしは差し出されたほっぺに、軽くキスをした
ああ
屈辱
「こんだけ?」
『キスはキスでしょ』
直也はハァーっとわざとらしくため息をつき
「約束だからな…」と扉を全開にして、リビングの方へ戻った
あたしも、今さらだけれど、胸や下を隠しながら
部屋へ出た