向かいのお兄さん
第14章 影
放課後
学校に残って勉強する子もいるけれど
あたしはすぐに帰る
日ごろの疲れが溜まりに溜まった今日は特に…
重い鞄を肩に提げ、フラフラと帰路を歩く
家までもう少し、というところだった
「美咲…ちゃん?」
『?』
隈さえできていたかもしれない
無愛想な顔をして、あたしは呼ばれた方を向いた
『…』
そこに立っていた男は、どこかで見たことのある顔…
着ている服から、何となく佐藤造花店で働くバイトの人かな
と予想できた
『…何でしょう?』
この場には、あたしとその男しかいなかった
だからきっと、あたしに話掛けたんだろう
ってか、名前呼んだしね
「神崎君から、伝言預かったんだけど…」
『か…』
神崎君?
『…』
あ、直也のことか