向かいのお兄さん
第17章 だから…
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「――――――…え?」
それから
もう二度と綾子と会うことはないと
そう思っていた
俺の大学二次試験は
明後日に控えていた
唐突に…
綾子が俺の前に現れたんだ
物言わぬ人形となって
「交通事故ですって…」
「何でも、空港に向かう途中のバスが、後ろから追突されたらしいぞ…?」
「可哀相に…まだ若いのに…」
「綾子ぉ、綾子ぉお…」
耳に
いろんな音が
入ってくる
ここにいる人たちは
みんな綾子の知り合いなんだな…
綾子の母親は
綾子の名前ばかりを呼び続け、泣き続け、悲しみに暮れていた
「…お悔やみ申し上げます…」
俺の言葉も
母親は聞いてなかったのかもしれない