向かいのお兄さん
第17章 だから…
「…はぁ…はぁ…」
気がついた
やっと、視界がよくなった
床に倒れたままの綾子は、手の平を目にあてがって
声には出さずに
泣いていた
「綾…」
気づいた
血が
落ちていた
俺はハッとして、綾子の顔に触れたが
綾子は俺の手を払いのけた
「…初めて…だったのか…?」
綾子は泣いたまま
頭だけコクンと
縦に動かした
「綾子…ごめ…」
「もう何もしないで…」
綾子は顔を見せないようにして
乱暴に脱がされた服を着ると
部屋を
出て行った
「…俺の…馬鹿…」
自分の頭を
本気で殴った
もう綾子は
俺との関係を
絶ったんだろうな
俺は
綾子を
泣かせたんだ