向かいのお兄さん
第17章 だから…
ふと顔を上げると
誇らしげに咲く花が
目に飛び込んだ
「…」
俺はその花の前まで行き
花びらに一枚、触れた
「…」
固いな…
これは花じゃ…ない
「…」
作り物なのに
咲き誇る花…
不思議な存在だった
「気になるのかい?」
突然後ろから
声が聞こえた
「…まあ…」
俺は振り返りもせず
そう返事した
「作り物にしては、なかなか本物みたいだろ」
そう言いながら、声の主は俺の隣に立った
50かそれ以上かの、おじさんだった
「はい…本物かと思いました」
だから俺は
この花に触れてみたんだ