向かいのお兄さん
第17章 だから…
「こいつらはなぁ、葬式の時なんかにしか出さないんだわ」
「…この会場、あなたが?」
「まあなー、造花店やってて、他の業者と協力して会場を作ってんだよ」
俺はもう一度、花を見た
「この花は…散ったりしないっすね…」
「そうだな…死者との別れの場に、散ってく花なんて見たくないしな」
「…」
死者との
別れ
この世界から
ひとりいなくなって
悲しむ人たちはいるけれど
それでも時間は過ぎて行く
いつしか、死んだ者の
"生"は
忘れ去られていく
記憶の風化とともに…
「俺も…」
忘れ去られていくことは
もう仕方がないのかもしれない
でもそれならせめて
"その人"が色濃く周りの人間の頭にある、今この場くらい…
"その人"を
精一杯のもてなしで送っても
いいんじゃないか…?
「俺も花を…飾りたい…」