向かいのお兄さん
第19章 心から
画面はボイスフォルダだった
『あれ…?』
あたしは目を疑った
あたしの"声"が、なくなっていたのだ
「消した」
『え?』
直也はあたしの緩んだ手元から、携帯を抜き取って
すぐそばの床へ置いた
「消した」
直也はあたしの目を真っすぐに見て
ただそう言う
『…消した…?』
「うん」
何がどうなっているのか…
直也の頭がボケたのか
あたしが夢を見ているのか
今までのことが全て嘘だったのか
あたしは
茫然とすることしか出来なかった
『な…んで…消したの?』
膝の上でギュッと握り締めるあたしの手の上に
直也は手を重ねた
「美咲と…セックスしたいから…」