向かいのお兄さん
第19章 心から
やった
やった
やった
あたしは
やっと
直也から
解放された
もう、遊ばれることもなくなる
イカされることもなくなる
あんな茶番に
付き合わされることもなくなる…
靴を脱ぎ捨てると、一気に階段を駆け上がった
自分の部屋に飛び込み、勢いよく扉を閉めた
『は…はは…』
扉を背中にして
あたしは上を向いた
『ははは…あれー…?』
天井が
ぼやけてんだな
『おっかしー…』
あたしは両手を顎にあてがって
少しずつ上に運んだ
『…んで…』
顔の形が変わるくらい、強く上に引っ張り上げて
まぶたの上を乗り越えると
手の平が濡れていた
『な…んでぇえ…』