向かいのお兄さん
第34章 何で
すぐ目の前まで直也が来ると、
どこか男らしい匂いで包まれた
『おはよ』
頑張ってるね
と言うつもりで、直也の腕を肘で当ててみた
直也は優しいほほ笑みだけを、その"おはよ"に返してくれた
『昨日飲んだお酒で、すっごい気分悪いの~』
なんて、わざと体を左右に傾けてみる
直也は
あたしの頭を二、三回撫で
その優しいほほ笑みを
歪めた
「…ごめん」
『え?』
直也はその一言だけを
あたしの中に、変な引っ掛かりと一緒に残して
また
仕事に戻っていった
呆然と立ちすくむ自分に気づいて、あたしは新聞を手に取り、
また家の中へ入った