向かいのお兄さん
第35章 彼女
『「え?』」
あたしも和樹も、同時に声を発した
「嘘だろ、浮気かよ~…」
和樹は手の平を額に宛がった
その目は次に、あたしに注がれる
『…言ってること…よくわかんないです…』
「だから、キスしてたんだって。
仕事終わりに壁に隠れて何してんのかなーって思ったら、な」
かっちゃんは親指を立てると、自分の後ろでしゃべる直也と由紀先輩を指した
「ありえないっしょー、直也って意外と二股なんてしない奴なのに…」
「冷やかしてやろっかなーって思ったけど、
直也、結構真剣な顔してたからやめといたんだ」
『…』
頭
回んないや…
「美咲ちゃん、どこ行くの…?」
和樹の声に、あたしは振り返らずに答えた
『家…帰る…』