向かいのお兄さん
第51章 甘い形で示したい
「ったくぅ…」
不満そうな遥は、もう無視無視
「ご注文はお決まりでしょうか?」
『あ、はい、えーっと…』
棚の後ろに立っている店員さんに言われ、あたしは小さなチョコレートケーキに目を落とした
『これください』
「かしこまりました」
ガラス越しに、トングで柔らかく運ばれていくケーキ…
しかしそれと同時に、ガラスの向こう側に見たことのある顔が見えた
『あれ?』
「あ」
あたしがまっすぐに体を立てると、目の前にいた店員さんも体を起こした
そして満面の笑みを浮かべ、口を開いた
「なーんだ、どこかで見たことあると思ったら、美咲ちゃんじゃーん♪」
『お…お久しぶりです…雅也さん』