向かいのお兄さん
第52章 わだかまり
直也はあたしの手を、キュッと握った
頭を上げて
あたしの顔を見上げてくる
「…美咲…」
『本当に、本当だから…』
「…」
直也が手を伸ばしてきたから
あたしは直也に、身を委ねた
ふんわりと、優しく包まれて
ほら…やっぱりあたし、直也が一番好きなんだ…
「お願い…」
顔の横で、直也が言った
「あいつとは、会わないで…」
『…』
明日も雅也さんは、お菓子作りの手伝いをしに来てくれることになっている
…でも、断ろう…
あたし、連絡先を知らないから…
迷惑だけど
来てもらってから…お礼を言って、帰ってもらおう…
『うん…』
直也の髪を
くしゃくしゃと撫でた
「ありがと…」
直也は犬みたいに
あたしに顔を擦り寄せた