向かいのお兄さん
第53章 崩れ
「なぁ美咲ちゃん」
『はい?』
「…よく頑張ったねー」
お菓子作りのこと…かな?
『いやいや、雅也さんも手伝って下さってありがとうございました』
このことは、本当に感謝してる
遥と行ったあのスイート店で雅也さんを見なかったら
あたし、お菓子作りは放棄してたかもしれないし…
「一途だねー…」
そう呟いた雅也さんの顔には
いつもの脳天気な様子はなかった
『…?』
顔を覗き込むと、雅也さんは笑顔を向けて
「じゃ、また何かあったら頼ってよ?」
『はい、本当にありがとうございました』
そうして家を出ていこうとしたから
あたしもお見送りに行った