向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
「な…なんだよ、泣くことないだろ…」
『うっさいなぁ!!』
大声で直也の声を遮ったのは初めてかもしれない
『直也…が、もう、…やだ!』
伝えたいことが
上手く口にできない
「は?俺がヤダ?」
今は直也と二人きりってわけじゃない
女性が、あたしたちのそばにいるのに…
『あたし、直也が、直也が…だから、いや!』
だだこねてる場合じゃないのはわかってるけど、せめてちゃんと言葉にしなきゃとも思ってるけど
なんか、言えない
「美咲…ちょっと落ちつけって」
そういう点では、直也の方が断然大人だった
悔しかったのは
言うまでもない
『あたしは…!
あた、しは…』
あたしだけを見てほしいんだよ…