向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
『直也の気持ち…考えてあげてください』
あたしは、幸子さんと目を合わせることに必死だった
『大切な母親なんですよ?
体のことを気にかけるとか…子供なら当たり前です』
力を抜けば、すぐにでも視線を落としてしまいそうだった
『それを…お節介とか何だとか…冗談であっても言わないでください』
「…美咲さん?」
幸子さんは、小首を傾げた
あたしは思わず後ずさりしそうになったけれど、何とか踏みとどまった
『直也があんなに怒ったりするのは…本当にあなたのことを考えてるから…』
「でもね、美咲さん、私は外に出たいの」
それだけはわかって?
そう訴えかける瞳に
ちゃんと応えることなんて出来ない
『直也にとってあなたは大事な人なんですよ!』