向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
『ちょー気になるんですけどー』
ちょっとギャルっぽく言ったら、「きも…」って返された
あたしが舌打ちすると、直也は突然足を止めた
『?』
「美咲はさぁ…」
そう言い出してくれた時、あたしたちはもう佐藤造花店の隣にある駐車場まで来ていた
話に夢中…とまでは言わないけど、話に集中していたせいか、ここまで来ていたことに全然気がつかなかった
「美咲はさぁ…将来の夢とか考えてんのか?」
『夢…?
えぇ…別に』
「何も、ない?」
握っていた手の力がゆるまった
心細くなったけど、あたしも無理してもう一度握ろうとはしなかった
『うん、まあ…あたしって悲しい人間ですかね』
今は、とりあえず…
適当に学校通って
適当に資格でもとっておいたらいいかって感じで、本当に適当に考えてた
将来のこととか、無理無理
現状に向き合うだけで手一杯
「悲しい人間とかは…別に思わない」
『…ありがと』
そういう直也はどうなの?
って言おうとしたのが分かったのか、直也は「俺は…」って続けた
「俺は…一応夢あるんだよねー」
直也は両手をポケットに突っ込むと、軽く辺りを一周した
それにあたしは、少し内側を付いて歩いた