刑事とJK
第97章 根城の裏で笑う者
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「遠藤さん、いらっしゃいますかー?」
薄暗い廊下に、新米刑事の声が響く。
「遠藤さーん?」
扉をノックする音も、何度も何度も聞こえた。
それでも、彼が求めるような返事は返って来ない。
「はぁ…」
…困ったな、大事な報告書をチェックしてもらわなきゃいけないのに…
刑事になって一週間。
室長から、先輩刑事は未だに紹介してもらえずにいる。
「何かと忙しいのも分かるけどさ…」
他の同期は、出勤一日目にして先輩刑事を紹介してもらっている。
まだ"先輩"と呼べる人物がいないのは、僕だけか…
彼はいつまでたっても遠藤という刑事が出て来ないので、先に帰ったものとして自分も戻ろうとした。
…ごとん
鈍い音が部屋から聞こえ、彼は振り向いた。
聞き間違いなどではない。
新米刑事は、手にしていた資料を強く握った。
そして扉に向き直る。
「遠藤さん、開けますよ!?」
新米刑事は苛立ちながら扉を開けた。
開け放たれた部屋からは、冷たい空気が流れ出る。
ぶるっと身震いして確認すると、部屋の電気は消えていた。
「?」
不思議に思いつつも、電気のスイッチを探し出す。
「遠藤さーん、いらっしゃいませんかー?」
パチッとスイッチを切り替えると、部屋の中は一気に照らされた。