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刑事とJK

第28章 道を示してくれたもの






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「斉藤、この荷物運んどいてくれー」



「了解っす」



当時、斉藤は17歳で、
小さな町工場で働いていた



もちろん正社員ではなく、
日雇い労働者だった






「斉藤君、よく働いてくれるよね」


「ああ、バイト止まりがもったいねぇな」




斉藤にとっては、
正社員でもバイトでも大して変わらなかった


ただ、こうやって自由に働けたなら、
それで満足だった















しかしある日、斉藤はクビにされた


不況の影響で、
斉藤やバイトだった他の人間は
真っ先に切られたのだった





退職金も出ない


新しいバイト先も見つからない



住んでいたアパートも
出ていくハメになった















「腹減った…」



金もとうとう底を尽きた


腹を満たすため、
公共の水道水を飲んだ




家には帰らない…

自分で生きていく…




ただ水だけで何日も過ごした




しかし、限界は来てしまった



水さえも体は受け付けなくなり、
斉藤はふらふらとスーパーに入って行った



店の中には、
それはもうおいしそうな食材がずらりと並び
斉藤は唾を飲んだ








こんなにたくさんあるのに、
どうしてひとつも取ったらダメなんだ…?







斉藤は袋に入ったパンを手に取った



ほら、もう自分の手の内に食べ物があるんだ…

どうしてこれを食べないでいられようか…






斉藤はバッと服の中に入れ、
そのまま店の外へ出た









喜びが込み上げる…


涙さえ出そうになった



しかし、その喜びも一瞬にして打ち砕かれた






斉藤はガッと肩を掴まれた


「お前、ちょっと」



斉藤は頭が真っ白になった





自分が取った行動がバレてしまったことよりも




自分が盗みをしてしまった事実に気づかされたことに、
愕然とした






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