刑事とJK
第60章 泣いてるの?
頭の中が真っ白になった
何が
起こったんだ?
ゆうひ
なんで
倒れてんだ?
この血は
誰の…
ゆうひ の
血
「うああああああああぁああー!!!!!」
斉藤はわけも分からず、男を突き飛ばし
男が持っていたナイフを取り上げた
刃先を男に向け、
首もと目掛け一気に振り下ろした
『ダメ…』
か細い声に反応し、
斉藤は首のすんでのところで手を止めた
男は恐怖で気を失ってしまった
斉藤は唇を噛んだ
男に向けた刃物は止まったが、
刃物を持った手がそこからどこうとしない
その手は震え出す
『…コ…殺しちゃ…ダメ…』
倒れたまま、
必死に顔をこっちに向けるゆうひの声と
ゆうひを刺した男への憎しみを晴らせ、
と叫びつづける自分の心の声
この両方に挟まれ、斉藤は動けずにいた
『斉藤は…刑事…で シ ョ?
殺しちゃ ダメ…』
斉藤はやっと刃物を捨てた
そして倒れたゆうひの体を、
座ったまま抱えた
「ゆうひ…何馬鹿やってんだよ…
なんでオレをかばったんだよ…?」
傷口からは血が止まらない
手で押さえるが、止まろうとしない
『…わかった…の』
「…え?」
ゆうひは涙で滲んだ目を斉藤に向けた
『斉藤の…いない、あたしの世界には…
なんにも…残んない カ ラ …』
「なに…言ってんだよ…
わけわかんねぇよ…」