刑事とJK
第60章 泣いてるの?
『斉藤…聞いて…』
「…んだよ…」
ゆうひはほとんど動かない唇で話した
『あたし…斉藤と出会えて…
こんなに変われたよ…?』
頭を斉藤の体にもたれさせる
『斉と…と、出会え テ …幸せだったよ…?』
「今さら…何言ってんだよ…?」
『学校で…、友達いっぱい…出来て…
楽しくって…』
ゆうひの声はどんどん小さくなっていく
「だから…何言ってんだよ…ゆうひぃ…」
ゆうひの顔に、
ポタッと何かが落ちた
それを感じて
ゆうひは少しだけ口元を上げた
『斉藤…泣いてるの…?』
「泣いてねぇ…」
『フフ…
初めて見た…斉藤の、泣きガオ…』
「泣いて…ねぇ…」
ほんと、いつもの仏頂面に
涙を足しただけ…
でも…
『声も、上ずっテ ル…』
「上ずってねぇ…!!」
この、しょうもない会話も
大好きだった
『…泣 キ 虫…』
ゆうひはゆっくりと手を持ち上げ
斉藤の頬を伝う涙を拾った
あたしはあんたに
いつもこうやって慰めてもらってたんだよ…?
「泣き虫じゃねぇ…!!」
次から次から、涙は溢れてくる
『じゃぁ…ひねくれ者 ?』
「ひねくれて…ねぇ…!!」
ゆうひは微笑んだ
『サ イ トォ…』
ゆうひは唇だけ動かした
ア リ ガ ト ウ
涙を拭っていたゆうひの手は
力尽きたように地面に落ちた
「…ゆう…ひ?」
生きていてくれて
ありがとう
あたしの
最愛のヒト…