願わくば、いつまでもこのままで
第1章 俺と兄とその嫁さん
「さあ入って入って、今お茶入れるからね」
「そんじゃお邪魔しまーす」
バタンと背中からドアの閉まった音が聞こえた。
綺麗に整えられ飾られた玄関は、ここに住む妻。
つまり比奈ちゃんの性格が写し出されている。
この玄関が俺は好き。
進んでリビングに入ると整った部屋の中央のテーブルにはお菓子の入った皿が置いてあり
ちょうど比奈ちゃんがお茶を入れたカップをテーブルに並べた所だった。
さすが、やる事早いな。
「今日も兄貴は仕事?」
「うん、そう。最近少し忙しくなってきたみたい」
比奈ちゃんはお茶を飲みながら答えた。
俺も飲もうとしたけど、まだ少し熱くて舌をすぐに引っ込めた。
「陽君は今日の大学どうだった?」
「それがさー…」
俺は毎月第二土曜日に大学の帰り、バイクで5分のこの兄夫婦の家に来ていた。
家に上がってお茶を飲みながら他愛ないことを話す、ただそれだけ。
でも、俺は今ではこの時間が毎月1番の楽しみで、比奈ちゃんに会える唯一の機会。
本当は来てはいけないのに、想いを募らせない為にも。
でも会いたくて、好きで、未だにここに来ている。
比奈ちゃんへの恋愛感情と
兄貴への嫉妬、罪悪感をあわせ持って。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える