All Arounder
第10章 Parent And Child
『でも…ごめん…あたし全然笑えないの…』
悪かった
とこっちが口を開く前に、姫が先にそう言ったせいで
大志は謝り損ねた
『あたし…困った顔しか…出来ないの…』
さっき斉藤に言われた言葉が頭をよぎる
けれど、その通りだ
自分は確かに、そういう顔しか出来ないのだ
『困った…顔しか…』
「充分だ」
姫が顔を上げると、さっきとは正反対の
温かく、優しい顔をして笑っている大志がそこにいた
「困った顔が出来るようになっただけ、充分じゃねぇか」
『え…?』
「初めて姫に出会ったとき、お前困った顔すら見せなかったろ?」
『…でも…』
「困った顔だけじゃねぇ。
照れた顔も、今みてぇに泣きそうな顔も出来るようになった」
『…』
「それに…だからオレが仕事を引き受けたんだからな」
『…』
危うく、涙がこぼれそうになった
必死にそれを堪えると、大志は姫の顔を見て笑った
「っ…お前なんつぅ顔してんだよ(笑)」
『ぅ…うるさい///』
たとえ雇い雇われの立場であったとしても
それだけではない気がしたし
それだけであってほしくないとも思った