All Arounder
第11章 High School Student
「姫はこっち座っとけ」
大志は足で、コンコンと隣の机を蹴った
『え…でも他の人が座る席は…?』
「ほっとけほっとけ。なかなかねぇ機会なんだし、気にすんなよ」
『…』
気にかけつつも姫はその席に座った
それとほぼ同時にチャイムが鳴り渡る
教室や廊下のあちこちでしゃべっていた生徒たちは、自分の席へ戻りはじめた
「あれ?そこ俺の席…」
『あ…』
姫の後ろで一人の男子が呟いた
姫はすぐさまどこうとしたが、その前に大志が言った
「おい、山田」
「ん?」
「お前はオレの後ろに隠れてろ。先生に見つかんじゃねぇぞ?」
「はあ?どういう…」
山田という男子は口答えする暇もなく
大志に引っ張られて後ろに隠れさせられた
『(…ごめんなさい)』
姫は山田に、目で謝った
「姫…」
『?』
「出来るだけ顔上げんじゃねぇぞ。わかったな?」
『…わかった///』
少し、ワクワクした
ガラッと前の扉が開き、40代半ばの男…おそらくこのクラスの担任が入ってきた
そして生徒のうちから
起立、気をつけ、礼っと声が聞こえた
『…』
姫は担任と顔を合わせないよう、必死に俯いた
それを見た大志は、こっちを向いて、優しくほほ笑んだ
『…///』
そうやってちょくちょく見せる笑顔に
照れてしまう自分がいるのだ…