All Arounder
第12章 That's Theft
聞いてもいいことだろうか…?
『大志って…父親のこと、嫌いなんですか?』
ゆうひは「ああ…」と小さく呟き、ぽつぽつと喋り始めた
「嫌い…なのかなぁ…?
うん、多分そうかもしれないね」
ゆうひはつらそうだったが、それは姫も同じ気持ちだった
『何でですか…?』
「思い当たる節はたくさんあるけど…1番の原因は"あれ"かなぁ…」
『"あれ"って?』
興味津々の姫が、なんだか珍しく思え
ゆうひは微笑した
「あれはもう十何年も前…確か大志が、7才の頃だったかな…――――――」
――
――――――――
――
「美空、またぬいぐるみ無くしちゃったの?」
「…」
悔しそうに服を掴む美空を、ゆうひは抱き上げた
その瞬間、美空の目からはボロボロと涙がこぼれ落ちる
「はいはいはい泣かないのー」
背中をトントンと叩く度、美空はその小さな体をしゃくり上げた
「みそら」
下から伸びてきた手は、美空の足を引っ張った
「こら大志、引っ張らないの」
ゆうひは大志を叱ったが、大志は言うことを聞かず
美空の足を引っ張り続ける
「にぃたん…」
美空も、自分の足を引っ張る大志の方を振り向いた
「あっ美空、危ない!!」
うっかり美空が落ちそうになる前に、ゆうひは美空を下ろした
大志は何も言わず、美空の手を引いて歩いて行った