All Arounder
第13章 Tear
日が暮れる時間になった
本日の依頼人はゼロ
これほど退屈なことはない
「…チッ」
大志は舌打ちすると、さっさと酒場を出ていった
「…大志、何かあったのか?」
「さあなぁ、朝からずっとあんな調子だよ」
井上はふーんと、何となく頷き、マスターに酒を頼んだ
―――――――――
ガチャッ
姫が顔を上げると、扉を開けた大志が目に入った
『お帰り…』
「…」
大志は何も言わず、ベッドに寝転がった
壁の方を向き、姫とは目すら合わそうとしない
『部屋…掃除してみたの…』
「…」
『掃除機かけたくらいだけど…』
「…」
『お節介だった…?』
「うるさい」
『…』
よく考えてみれば
この状況は明らかにおかしかった
金を払っているのはこっちだし、怒ったり文句つけたりできるのは
あたしの方なのに…
怒った雇われ側の機嫌を、何であたしが取ろうとしているの…?
…それはあたしが
大志の仕事以上の領域に、足を踏み入れたからだ